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記事: 「努力は裏切らない」3年4カ月の航海

「努力は裏切らない」3年4カ月の航海
interview

「努力は裏切らない」3年4カ月の航海

RRC member interview
text:Shun Sato

第15クール A0チーム(目標:フルマラソン サブ3)MVP 市川貴洋さん 

サブ3挑戦のスタート

長かったです。 
サブ3を達成するために、こんなに時間がかかるんだなぁって実感しました(笑)。 
2019年の横浜マラソン(3時間44分)がマラソン人生のスタートで、2024年の東京マラソンで初めてサブ3に挑戦しました。ただその時は、前年の湘南国際マラソンで腸脛靭帯を痛めた影響もあり、コンディションも万全ではなく3時間2分41秒。あと少し及びませんでした。

続くその年の11月、つくばマラソンには万全の状態で挑めました。ところが、35㎞でエネルギーを使い果たし、最後はラップが4分45秒まで落ちてしまいました。結果は、3時間1分29秒。距離にして、あと300mちょっと届かなかった。

その時、いつも助言してくれるツッチー(土本優作さん)と是枝君から「30㎞走やったの?」と指摘されたんです。実は、ロング走の練習は25㎞までしかやっていなかった。その反省から30㎞走を練習に取り入れ、長い距離への耐性を付けて、翌25年の別府大分毎日マラソンに臨みました。

サブ3の高い壁

別大では、絵(片山)君とわたびー(渡部健太さん)がペーサーを買って出てくれて心強かったですね。それなのに、21㎞で呼吸が上がってしまって……。わざわざ大分まで来て、自分のためにペーサーをしてくれたのに、レースの半分で終わってしまった。最後は歩きながら完走がやっとでした。あの時は、情けなさと申し訳なさでかなり落ち込みました。

そこから3週間後の大阪マラソンでも結果は、3時間2分06秒。どうしても、あと1分、2分が削り出せませんでした。この「1分、2分」が、無意識のうちに自分の中でとても高い壁になっていったんです。

自分だけが‥‥の焦り

焦りもありました。RETOで同時期に加入した仲間の有馬先生やフルフル(古山陽介さん)などが次々とサブ3を達成していったので、自分だけが置いていかれた感覚に陥りました。

でも、その悔しさを絶対に忘れないように、つくばマラソンのビブスに「一瞬の我慢、1秒の我慢、1メートルの我慢」と神野大地さんに書いていただき、高木聖也さん、タムケン(田村健人さん)にも激励のメッセージを書いてもらいました。それを箱根駅伝の予選会で負けた選手のように、いつも目に見えるところに飾っていました。毎日それを見て心に闘志を燃やし、日々の練習に取り組むようになりました。

つくばでの失敗を糧に

また、つくばでの失敗を機に、レース内容の振り返りや練習のプロセスをメモし、良かった点、一方でうまくいかなかった原因などを分析する習慣をつけました。ポイント練習の日には、その日の出来や感触を日誌に残す。仕事と同じ「PDCA」を回し始めたんです(笑)。

今季(25年秋〜26年冬)に入るにあたり、マインドセットも変えました。人と比較する意識を持たないようにしたんです。目標を達成できないと「あの人はできているのに自分は」って考えがちですが、自分はトップアスリートのように誰かと競争をしているわけではありません。自分の実力を正しく受け止める。そこからリスタートしました。

新たな練習サイクルの確立

特に力を入れたのが睡眠とリカバリーです。40代半ばになり、疲労が抜けにくくなりました。だから、週末は近所の銭湯で交代浴を行い、ポイント練習やロング走の前日や練習後はお酒も控え、リカバリーを重視しました。少し痛みが出たらスポーツ整形外科に行き、超音波やマイクロ波治療を受ける。メンテナンスに時間とお金を使うようにした結果、怪我無く練習を積み上げることができたんです。

自分としっかり向き合い、リカバリーにかかる時間や日々のコンディションを定量的に把握することで、レース本番に向けて調子をピークへ持っていく「自分なりの練習サイクル」を確立することができました。このサイクルが固まったことで、週末には個別のポイント練習(通称・イッチー練)を自ら企画し、RETOの仲間たちと一緒に切磋琢磨できたことも大きな収穫でした。

つくばでの悪夢

今季のプランは明確でした。前年に悔しい思いをしたつくばで何が何でもサブ3を達成し、勝田全国マラソンをステップに、東京マラソンで2時間55分に挑戦する。

つくばに向けては、3週間前から禁酒や食事コントロールを徹底しました。当日は移動で午前5時30分に秋葉原から電車に乗るので、1週間前から午前3時45分に起床をして体内時計を合わせました。これが自分のオリンピックだという覚悟で、やれることは全てやり尽くしました。  

しかし、本番は残酷でした。レース中、30㎞過ぎぐらいから強烈な吐き気に襲われ嘔吐(キラキラ)しました。結果は、3時間5分12秒。ゴール後には低体温症で、救護室に運ばれました。さすがに、この時は自分の本番力の弱さに心が折れました。1週間前のポイント練習(10㎞のLT/テンポ走)も1㎞3分56秒ペースで自己ベストだったんです。みんなからも、「絶対にいける」と言われていましたし、自分自身も自信がありました。準備にも一切の抜かりはなかった。……そこまでやってもできない。どうして本番で何もできないんだ、というショックがかなり大きかったです。

救われた仲間たちからの声

そんな時もRETOの仲間が声をかけ、励ましてくれました。特に杉ちゃん(杉田侑菜さん)からもらった「結果を問わず、本気で取り組んだプロセスと時間が人生を豊かにしてくれている」というメッセージには、本当に心が救われました。

リラックスして臨んだ勝田

そこから2カ月後の26年1月の勝田。ここは当初、東京のステップレースと位置づけていたため、気持ち的にはリラックスしてスタートラインに立てました。振り返るとそれが結果的に良かったのかなと思います。

何より背中を押してくれたのは、RETOの仲間からの応援ですね。40㎞ポイントで、是枝君、絵君、恵一郎(飯山さん)が沿道から張り裂けんばかりの声で応援してくれた。時計を見ると2時間50分。そこからは必死でした。そして、残り1㎞の41.2㎞ポイント。わたびーが「いけー!!ここで(サブ3を)やらなかったらいつやるんだ!」と、まるで駒澤大の大八木総監督のような強烈なゲキで鼓舞してくれた。

目標達成の涙

仲間の顔が次々と頭に浮かびました。「今日サブ3をやらなきゃ、もうRETOにはいられない」。そんな想いで、最後は持てる力をすべて絞り出して駆け抜けました。ゴール後に止めた腕時計を見ると、2時間59分28秒。安堵感に包まれましたが、その直後に岡田(拓海)くん、有馬先生、わたびーの顔を見た時は、感情が溢れて、年甲斐もなく泣いてしまいました。

長い航海の末

RETOに入会して3年4カ月、6回目の挑戦でようやく掴んだサブ3。それだけに長く感じましたし、結果が出ない時は、何がダメなのか深く悩みました。でも、聖也コーチの練習メニューを信じ、神野さんのサポートやアドバイスを心の支えにして進んできたことが報われました。そして何よりも、良い時もつらい時も寄り添い、支え合ってくれるRETOの友人・仲間たちがいたからこそ、ここまで来ることができました。

自分の哲学

私はもともと目標を決めたら最後までやり続ける性格です。高校の部活、大学受験、社会人になってからの仕事でも幾度となく壁にぶつかりましたが、諦めずに乗り越えてきました。「諦めずにやり続けることが成長につながり、結果につながる」。自分の根幹にあるその哲学が、マラソンでも実を結んだのだと思います。まさに神野大地さんが掲げる「努力は裏切らない」という格言そのものです。

マラソンへの情熱

サブ3を達成した今、改めて自分はマラソンが好きなんだなと実感しています。テレビ番組で、ハリー杉山さん(RETOの練習会にも来てくれるんです)が、藤原新さんに「普通の人がお酒を飲んで楽しいと言っているのと同じぐらい、僕はマラソンが好きで楽しいんです」と語っていました。自分もまさにそれだなって(笑)。  

私はマラソンが大好きなので、これから何回走っても、この火が燃え尽きることはないと思います。 

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