コンテンツへスキップ

カート

カートが空です

記事: いろんな思いを抱えて立ったスタートライン

いろんな思いを抱えて立ったスタートライン
interview

いろんな思いを抱えて立ったスタートライン

RRC member interview

text:Shun Sato

予期せぬ吉報

 2025ー2026シーズン Bチーム MVP 神谷久美さん

 「えっ??わたし」

 2025‐2026のBチームのシーズンMVPの発表、神谷久美さんは驚いたという。

「全然想像していなかったですし、もうかなりお酒も飲んでいたので、急に名前を呼ばれてびっくりしちゃいました(笑)。私はBチームで、そこはサブ3.5が目標じゃないですか。自分の目標タイムをクリアして3.5に近づいたけど、3.5はしていなかったので表彰はないなって思っていたんです。でも、うれしかったですね。今回、頂いた賞は私1人が頑張って獲ったものではなくて、周りのみんなに応援してもらえて、助けられて、支えられて頂けた賞だと思っています」

人命救助の余波

 神谷さんは、3月の名古屋ウイメンズマラソンで3時間33分25秒をマークし、2年連続で自己ベスト更新を達成した。

 本来であれば昨年10月の岡山マラソンで自己ベストを更新できるはずだった。だが、ゴール手前で倒れたランナーの人命救助に当たり、自己ベストを捨て、ランナーの命を救った。RETOの記事でも取り上げたが、看護士としての職責を果たした行動はたくさんの人に称賛され、岡山マラソンからも感謝状が届いたという。

「あの後、いろんな方からすごかったねと言っていただくことが増えて、すごく反響が大きかったです。もう少し詳しく話を聞かせてくださいという方にもお話しをしたりしました。あと、このことをキッカケにRETOのゆっこさんもそうですけど、救命講習会に参加されたりして、そういう現場に立った時に役に立てたらいいなっていう声をいただいて実際に参加される方が増えたのはすごくうれしかったです」

 イベントやレース会場などでランナーからは「これからも頑張ってね」と声をかけられるようになった。

「そういう声をもらえるのは、ほんとうに励みになりました。でも、ちょっとプレッシャーもありましたね。名古屋は何がなんでも頑張らないといけないって」

心強いペーサー

 勝負の名古屋だが、神谷さんにとっては非常にうれしい出来事があった。ペーサーが決まったのだ。岡山マラソンの時は成相陽平さんがペーサーをしてくれたが、時計など余計なことを気にせず走れるのはもちろん給水などもお任せしてくれるので、走ることだけに集中できた良い経験があった。それだけに大変さも理解していたので、岡本加奈子さんからの申し出に最初は「大丈夫だよ」と遠慮していたが、名古屋は心強いパートナーを得ることができた。

「名古屋の目標は、岡山が45分だったので、そこは最低限クリアしないといけないと思っていました。ただ、自分の走力で言うと40分切りかなと思っていて、35分までは見ていなかったですね。この時は、走りたくても走れない人がいるということ、ベストを出したくても出せないコンディションの人がいるという事を胸に刻んで、スタートラインに立ちました」

レッドカーペットの爆走

 気持ちを高ぶらせて走った名古屋ウイメンズは、3時間33分25秒だった。

「名古屋は、コンディション含めて本当にハマったレースでした(笑)。走っていて調子がいいのでついつい設定よりも速く走って、途中でかなちゃんに『前に出たらダメだよ』って言われて(苦笑)。ジェルは欲しいタイミングでないと嫌なので自己管理していましたけど、給水とかは全部取ってくれてありがたかったです。35キロの地点で神野さんに『35分切れるよ』と言われたんですが、それまでかなちゃんに任せていたので、ラップとかも気にしていなかったんです。でも、そう言われたので、えっ切れるの?切れるなら切りたいと、そこでスイッチが入りました」

 35キロ以降、岡本さんから「ここから上げる?どうする?」と聞かれた。ここで上げてオールアウトしてしまうのは嫌だなと思い、今のペースのままで行くことにした。

「最後、ドームが見えてきたらめちゃ元気になって、レッドカーペットを爆走しました(笑)。あんなに速く走れると思っていなかったけど、やっぱり終わりで元気が出て最後走ることが出来て良かったです」

親友への思い

 神谷さんの自己ベストを多くのランナーが祝福してくれたが、とりわけ喜んでくれたのが親友でもある小渕美和さんだった。

「今回は、美和ちゃんのことがすごく大きかったですね。昨年の名古屋に一緒に出たんですけど、自分の走力が足りなくてハーフぐらいでキツくなってしまったんです。美和ちゃんは余裕があったので、『先に行っていいよ』ってそこで別れたんです。そのことを美和ちゃんは気にして、私に申し訳ないみたいに思っていたらしくて‥‥。でも、私はそんなの全然気にしていなかったんです。人それぞれ走力が違うし、コンディションも違うじゃないですか。そう思わせてしまった私がもっと頑張らないといけないと思いました」

笑顔で迎えてくれた親友

 その時、小渕さんは、3時間37分の自己ベストをマークし、神谷さんはそのことが本当にうれしかったという。RETOの練習会ではいつも同じチームで練習して、つらくなってもお互いに尻を叩きながら頑張って来た。だが、昨年、小渕さんが体調を崩して治療に臨むことになってから同じチームで練習することができなくなった。

「美和ちゃん、つらいけど、絶対に弱音を吐かないんです。いつも笑顔で、みんなに接しているのを見て、何かしてあげたいけど、何もできない自分にすごくモヤモヤしていたんです。名古屋のレースの時、美和ちゃんは薬の副作用とかで走れるかどうか分からない状態にもかかわらず、スタートラインに立ったんです。そんな美和ちゃんが走るのに自分が途中であきらめるわけにはいかない。つらい時がきても絶対に走り続けて今の自己ベストを出すと誓って走りました」

 小渕さんがゴールした後、神谷さんは自己ベストのタイムを言うと「よかったね」と満面の笑みで喜んでくれた。

「なぜ、こんなに仲が良いのか、いつから仲良くなったのか、よく分からないんですけど、私にとって本当に大切な存在です」

仲間の気持ちを抱えて

 名古屋では、小渕さんだけではなく、神谷さんのゴールを待ってくれていた人もいた。CHEERS(チアーズ)というチームで名古屋ウイメンズプロジェクトに参加していたが、その仲間のひとりがレース直前に怪我をして出場できなくなった。

「その子とも一緒に練習して、励まし合ってきたのでレースに出られないことが本当につらくて‥‥。それでもレース会場に来たのでいろんな思いを抱えていたと思うんです。その子がゴールで待っていると思ったらレースに出られる自分が途中であきらめることはできない。彼女のこと、美和ちゃんのこと、いろんなことを抱えて挑んだ名古屋でした」

いつも笑顔で

 インスタでゴールした神谷さんの表情は歓びが爆発していた。インスタを含めて神谷さんのSNSはいつも笑顔で楽しそうだ。

「それ、よく言われます(笑)。すごく楽しそうって。でも、それって周囲に楽しいと思わせてくれる人がいるからだと思うんです。いろんなところに顔を出して、楽しく走ることが理想なので、そういう楽しむ気持ちが出ているのかなぁと思います」

サブ3.5への挑戦

 名古屋で結果を出し、サブ3.5に限りなく近づいた。次の目標は、この壁をクリアしていくことになるのだろうか。

「そうですね。次はサブ3.5だなと思っています。今も地道に走っていますが、夏ぐらいからマラソンはスイッチを入れて行く感じです。これまでマラソンは、岡山も名古屋もペーサーがついてくれていたのですが、本来マラソンはひとりで走るものじゃないですか。やっぱりひとりで走れるようにならないといけないので、今からひとりで走るってことに慣れて行こうと思っています」

なぜ、走っているのですか

「私、ひとりで走るのって好きじゃないんです。ひとりで走るのって退屈で(苦笑)。山を走ると自然が溢れているし、空気がおいしいし、レースそのものを楽しめるんですけど、ロードをひとりで走るって全然楽しくなくて。それでも走るのは、美味しいものを食べたいし、おいしいお酒を飲みたいし、健康でいたいのと、あとは走っている人ってキラキラしているじゃないですか。走っていたら私もキラキラするんじゃないかなって思って走っています」

 

Read more

家族とともに駆ける
interview

家族とともに駆ける

RRC member interview text:Shun Sato 本気の受験  2025ー2026シーズン A+チーム MVP 土本優作さん土本優作さんにとって、2025‐2026シーズンは充実の1年になった。 中小企業診断士の試験とマラソン、ともにしっかりと結果を出したからだ。中小企業診断士とは、中小企業の経営強化や問題点の洗い出し、経営面でのアドバイスや指導を行う国家資格...

Read more
いろんなものから解放された瞬間
interview

いろんなものから解放された瞬間

RRC member interview text:Shun Sato 練習を切り替えた理由2025ー2026シーズン C+ チーム MVP 青木瑞恵さん3月の静岡マラソンで、3時間41分06秒をマークし、3時間45分を切った青木瑞恵さん。自己ベストをマークできたのは、スピードを出さずに距離を踏むという練習を継続していったからだという。その練習に至ったのには理由があった。「本当は昨シー...

Read more